食べあわせ ドアを開ける。 漏れる光。 成歩堂がいるようだ。 まさか、事務所に行かずに一日いじけていたわけではないだろう、と思う半面、布団にくるまってずっといじけてる姿も簡単に想像できてしまう。 「お帰り〜」 御剣が何事かを言う前に、成歩堂の声。 楽しげな声色、スキップでもするような足音。 「な、成歩堂・・・」 一瞬、目を見開いて、御剣は口を金魚のように動かして・・・ 「御剣!?」 御剣の身体が傾ぐ。 成歩堂は慌てて、手を差し伸べる。 床に倒れ込む手前、自分も座り込むように、どうにか御剣の身体を受け止めた。 「御剣?」 軽く揺すっても、御剣は反応しない。 成歩堂は激しくうろたえながら、御剣の身体をベッドに運んだ。 暫くして、御剣が目を開けた。 成歩堂は安堵のあまり、泣きそうになった。 「・・・」 御剣は成歩堂の姿を認めると、瞼を閉じた。 「御剣、大丈夫?」 「・・・その服を脱ぎたまえ」 「へ?」 成歩堂の服−今朝方、御剣に着て欲しいと駄々をこねた、エプロン。 彼ひとりがすることが嫌なのだろう、と思って、自分が着てみた。交代だと言えば、彼はやってくれそうだったから。 その姿は、繊細な神経の検事には耐え難いものだったようで。それでなくても、簡単に精神的外傷で失神する癖のある検事はひとたまりもない。 いい年の男が裸にフリルのたくさんついたエプロンをしている様は、他の者が見たって気持ち悪いだろう。ガタイのいい生足とか・・・ 「何だ・・・それは・・・」 再度、目を開けて、正視してしまって、御剣は口元を押さえる。 「ひどいよ、御剣・・・」 「誤解のないように言って置くが…私は成歩堂が好きだ。そのエプロンも好きだ。しかし…その二つが組み合わさると…何だ…例えて言うなら米粒とスイカのような…うぅ」 甘いスイカの果汁の中に混ざった米粒を食す場面を想像して、気持ち悪くなる。 「わかった。キミに似合うようなそれ用の衣服を買ってこよう」 それ用って一体何?と成歩堂は思ったが、口に出す前に、御剣が行動する。 ベッドから起き上がると、スーツを脱ぎながら、部屋から出て行く。 「キミも脱ぎたまえ。…風呂に入ろう」 |