信じましょう きみのしんじるすべてのものを きみがしんじるすべてのものを −きみがしんじたすべてのものと −きみがしんじるはずだったものを 信じることは疑うことよりずっと楽。 『罪悪感を抱かなくてすむから−』 なんて、ことを言ったらきみはどんな顔をする? 「御剣」 眠るきみの頭を抱え込むようにして引き寄せる。 きみが自身の理想をうつした『ぼく』が、その幻影を裏切ったら、きみはどうするだろう。 ほんとは誰も信じてなんてない 何も信じてなどいない 疑うことが面倒なだけ− ぼくが思考の時間をさいてもいいと思うのは、きみという存在だけ。 「ねぇ、御剣」 きみの身体が僅かに動いた。 身じろいで、無意識に擦り寄るきみ。 きみが何かに依存しなくちゃ生きてさえいけないほど弱いって知っていたら、もっと早くに無理矢理でもここに−ぼくの腕の中に−引き寄せたのに。 きみが世間に抱かせようとした『きみの幻影』に、ぼくも長い間騙されていた。 完璧で、自信に満ちて、揺るがない、有能なきみ。 −だから、ぼくは、きみさえも信じない。 きみの言葉、きみの行動、表情、仕草、何もかも。 愛を囁く言葉さえ、心の底から信じることは出来ない。 逆に、ぼくを否定しようとする言葉だって、信じることは出来ない。 「御剣」 パジャマの間から掌を這わせる。 抱き込んだ身体がびくっと背をそらせた。 「あ・・・なるほどう」 夢現に呟かれる名前の響きはとても甘くて。 ぼくの体温は上昇する。 「御剣」 平たい胸、滑らかな肌に掌を這わせる。 「ん・・・ぁ」 まだまだ半覚醒状態のきみは、押さえることのない甘い声を上げる。 かたく、つんとたちあがった彩りを指の腹で軽く揉む。 掌をぐっと胸に押さえつける。 微かに伝わる、きみの鼓動。 「成歩堂」 ぱちり、ときみの瞳が開いた。 「きみの、鼓動を確かめたんだ」 ぼくの言葉が不可解だったのか、きみは眉根を寄せる。 「きみがいるのを確かめたんだ」 −きみが生きているのを確かめた 「ここは、心地がよい」 きみは目を閉じて、ぼくの胸に頭を預ける。 「おやすみ、御剣」 ぼくが信じるのは、きみの鼓動、きみが生きているという事実だけ。 それさえあれば、他には何もいらない。 きみさえいれば、他には何もいらない。 今日も、明日も明後日も、きみの理想を体現しよう。 きみがぼくを信じるように。 きみが信じているぼくの姿を演じよう。 きみが信じれば、それは演技ではなく、きみにとって『真実』となるのだから。 |