机 突然の揺れ− 御剣は動揺した。 そして、その動揺している自分を刑事に見られたことで更に動揺した。 その間、数秒あるかないか。 気づいたら、御剣は己の処務机の下に潜り込んでいた。 −地震の際は机の下に入る。これは正しい・・・ そう言い聞かせて、震える自分を抱き締める。 長い揺れだと思った。 「御剣ぃ〜」 まだ揺れている最中、これから余震もあるというのに、扉が開く。 情けない声はアイツに違いない。 「み、御剣検事はいらっしゃらないっスよ」 「あぁ。そうか・・・御剣〜」 遠ざかっていく声。なんとも頼りない男だ、と自分を棚に上げて、御剣は溜息をつく。 余震も収まり、ようやく御剣は机の下から出て行った。 平然とした表情を浮かべて。 「あの、検事・・・」 「何だ」 「先程、勝手なこと言っちゃってすまなかったっス」 「いやいい。・・・感謝する」 きっと、情けない自分の姿を見せないようにしてくれたのだろう、と御剣は思った。 給料査定を少し甘く見てあげようかな、という考えも起こった。 「あの・・・御剣検事」 「何だ?」 刑事は顔を赤くしている。 「もし・・・地震が次に起こったとき、机がなかったら、俺が守ってあげますから・・・あ・・・えと・・・そういう意味じゃなくてですね・・・失礼しますっス」 脱兎のごとく走り去っていった。 後には少し頬を赤らめた検事が残された。 その夜、御剣のマンションに成歩堂がやってきた。 昼間の件もあり、少しだけ醒めた目で見てしまう。 「昼間の地震、すごかったねぇ」 隣に腰掛け、成歩堂は擦り寄る。 −君は情けなかったぞ それは口には出さなかった。 「地震の時って大切なものを持ち出さなきゃ、って思って・・・御剣探しちゃったよ」 皆に馬鹿だって怒られちゃったよ、と成歩堂は笑う。 「・・・ありがとう」 目の奥がじん、ときて、御剣は成歩堂をぎゅっと抱き締めた。 「え?うん・・・」 少しだけ驚いた成歩堂は御剣を抱き締め返した。 「やっぱり、御剣が一番大事」 その揺ぎ無い思いが嬉しかった。 「ありがとう」 もう一度、少しだけ謝罪の意味も込めて、御剣が呟いた。 |