怖い きみの怖いもの。 完璧に見えるきみの苦手なもの。 ぼくはたくさん知ってる。 平気なふりをしてることも知ってる。 そして、少しだけ、ぼくに本音をみせてくれることも知ってる。 「御剣」 震えるきみを抱き締めて。 耳元でそっと、紡ぐ、約束。 「ぼくはひとつだけ、怖いもの、なくしてあげられる」 地震と暗闇とエレベーターと、過去の夢と辛い記憶と− それはぼくには無理な相談だけど。 震えていることなんて、認めないきみをさらにぎゅっと抱き締めて。 「約束してあげる。すごいでしょ。きみの怖いもの、ひとつだけ消してあげるよ」 魂まで届くように、魂に溶けてしまうように甘く、甘く囁く。 「ぼくはずっときみの傍にいる。きみの前から消えたりしない」 −きみの怖いもの、ぼくがいなくなることも含まれているんだろう? 「きみを残してなんていかない。おいていってなんてあげない」 御剣の手をとって、小指の先にキスをした。 「きみをひとりにさせてあげない。だから、ぼくの手を握ってもいいんだよ」 自分でも思う。なんて傲慢な言葉。 それでも、それは本心からの言葉。 「きみが戻ってくるところは、此処。ぼくが何処かにいくときは、きみを必ず連れて行く」 遠まわしに言ってるの。 −一緒に生きて、一緒に死のう −ぼくが死ぬときは、きみを 「ね、連れて行くから」 「きみが行くなら、追いかけるから」 寂しくないように、手を繋いでいこう。 御剣の手がぼくの手に重ねられた。 手を繋いで、震えのおさまった御剣の身体をぼくはもう一度、ぎゅっとした。 |