ハロウィンss 「トリックオアトリート!」 ぼくは背後から御剣に抱きついた。 耳元に息を吹きかけた。 「馬鹿者ッ」 突然の行為に驚いて、耳を赤くした御剣に怒られる。 「なんだ、その格好は」 「似合わない?」 普通のスーツにとんがった魔女の帽子。 似合うとか似合わないとか、それ以前の問題があるかも知れない。 「ね、それより」 お菓子頂戴、と強請ってみた。 「あげない」 「えー。 トリックオアトリートだよ?いいの?」 いらずらしちゃうよ、ともう一回耳元で囁いた。 いや、ほんとはお菓子は口実で、きみに会いたかっただけ。 ほぼありえないことだけど、御剣がお菓子を素直に出してくれたとしても、いらずらする気満々だったぼく。 「・・・構わない」 「・・・え?」 「それが目的だったのではないのか?」 悪戯っぽく笑った御剣からキス。 「きみの考えなど、お見通しなのだよ」 「・・・自信家だね」 「違う、というなら立証してみせたまえ」 いい年をして、お菓子を貰って歩くことを恥ずかしいと思っていないと前提にして考えると、ハロウィンという名目でお菓子を貰うことが目的なら、深夜に自宅に押しかける必要もない。 それに他の者に貰いにいった形跡もなければ、お菓子をいれる袋も用意していない。 きみは今日、私の家だけをターゲットにしているといえるだろう。 私の家に菓子が常備されてはいないことはきみも承知の筈で、本当にお菓子が目的ならばあらかじめ前触れしておくべきだろう。 唐突に現れたこの場合― 「ストップ」 ぼくは御剣を抱き締めて、キスをして唇を塞いだ。 「そう、きみに会いたかった。抱き締めて、キスしたかった。それでイイ?」 「そうなのだろう?」 「うん。だけど、それだけじゃないよ?」 御剣の顎のラインに指を走らせる。 びくっと震えて、御剣は目を瞑った。 「いいよね?」 フリルタイをするりと外して、御剣の身体をソファに押し倒す。 ドレスシャツの釦を外して、白い胸元に舌を這わせる。 「ここでか?」 呼吸を上げながら、御剣が呟く。 「そう、悪戯するよって言ったよね」 あくまで悪戯。額にキスをして、艶やかな髪をかきまぜて、また、唇を吸う。 白い胸に這わせた指で、彩りを摘むと、御剣が喉を鳴らす。 「あ・・・」 薄く浮き出た頚動脈の上をなぞるように舌を這わせ、軽く歯を立てた。 刺激にびくっと御剣の背がしなる。 「なるほどう」 ぼくの後頭部に添えられた御剣の指が、髪を梳く。 心持ち、自分のほうへぼくの頭を引き寄せる。 「御剣」 羽の形に浮き出た首元の骨を指の腹で辿る。 それだけの刺激で、御剣は大きく息をつく。 軽く肌を吸い上げると、甘い声を漏らした。 薄らと色の滲む肌、内側から浮かび上がる花弁の形。 「悪戯されてるのに、気持ちよさそうだね」 くすくすと笑って、ぼくは悪戯を続ける。 耳朶の後ろをくすぐり、彩りを強めに摘む。 「んぅ・・・」 揺れる髪、蛍光灯の光を弾いて、柔らかな色をかえす。 「成歩堂」 潤んだ瞳で、御剣が見上げる。 「あ、もう我慢出来ないや」 それは御剣の計算のうち、かも知れない表情。 ぼくは、もう悪戯してる余裕はなくなった。 寝室へ行こう、という唇の動きだけの誘いに、一も二もなく頷いた。 時間さえあればもっと長く!もっといろいろ!高校生ネタもかきたかった!あぁ、どうして24時間しか一日はないのか。(ていうか、前もって書けば・・・?というツッコミは不可で。だって当日に思いついたんです・・・いろいろ) |