誘導尋問 「ぼくには御剣がいるから」 (この時点ではまだ大事な友人、と思ってるだけかも・・・) そういうと、一瞬、矢張はぽかんとした表情を浮かべて、次に噴出した。 「そりゃ、お前らは仲いいけど。そういうんじゃなくて、コイビトのことだよ」 「ぼくが好きなのは御剣だし。御剣もぼくが好きだから、いいんじゃない?」 矢張は大袈裟に溜息をついてみせた。 「お前だって、弁護士だし、もてるだろ?彼女とかつくらないの?って聞いてるの。誰と仲いいかなんて聞いてないし。お前らが・・・俺もだけど、仲いいのは知ってるし」 「弁護士だからってもてても嬉しくないよ?」 「そりゃそうだけど」 なんか、話が食い違ってるぞ、と矢張は訴える。 「あ、ヤベ。デート遅れるわ。じゃ、また今度」 「あぁ、じゃぁね」 口を開きかけた矢張、時計に目を向けて、慌てて駆け出していった。 ぼくは今度の彼女で何人目なのかな、と計算しかけてやめた。 全部知っているわけじゃないから、数えたところで何になる? 誰もいない事務所。 真宵ちゃんも今日はいない。 矢張の言葉じゃないけど、何だか寂しくなって、御剣の顔を見たくなった。 『独りって寂しくないか?』 『誰かのぬくもりに癒されたいってことないか?』 (矢張くん、問題の種をまいていった模様。事件のかげには・・・) それは、もう、ぼくにとって彼しかいないわけで。 きっと、彼も同じ気持ちの筈。 (!!究極のストーカー!!) ぼく以上に彼を判っている人間はいないもの。 ぼくは彼以上に、彼のことを知っている。 (・・・それをひとはストーカーと呼ぶ) きらり、と光った携帯。 ディスプレイを見る間でもなく、きみからだとわかった。 ぼくが逢いたい、と思っている時、きみに電話しようか、と考えた時、こんなタイミングでよくあるメール。(成歩堂は恋のマジックだと思っている模様。単なる偶然。成歩堂が御剣のことを考えているとき毎にメールしてたらしゃれにならない電話代に!!) 控えめな食事の誘いに、ぼくの顔は綻んだ。 「勿論、何の用があっても、きみを優先するにきまってる」 ディスプレイの文字を指先でなぞって、御剣の顔を思い浮かべた。 早速、返信を打つ、より早くリダイヤルを押す。 「もしもし、御剣?ぼくだけど・・・」 (ぼくだけど、で通じると思ってるところがキモイ) ぼくの姿を認めて、コートの裾を翻し、早足に歩いてくるきみ。 「待たせてすまない」 僅かに眉を寄せて、少しだけ視線を伏せて、言葉を紡ぐきみ。 ぼくを待たせたときのそんな表情も好きだけど、ぼくを待っていたときのきみの顔のほうが好きかも知れない。 ぼくの姿を探して、視線を彷徨わせて、そしてぼくを見つけたときに見せる顔。 怒っているように見せながら、それでもぼくを見て、ほっと安堵の息を漏らす瞬間をぼくは見逃さない。(それは思い込みでは・・・?/笑) 「全然待ってないよ。どこにいこう?」 吐く息が僅かに白くて、そして、外気にさらされた頬がほんのりと色づいていて、ぼくはその色に目を奪われる。顔を赤くする御剣、というのはあまりあることじゃないから。 「どうした?」 「・・・なんでも」 真顔で問いかけてきた御剣から視線をそらして、ぼくは笑った。 御剣の顔はほんとに綺麗だなぁと思った。どんなにじっくり見ても、欠点の見当たらない顔なんてそうあるもんじゃない。 「何処にいこうか。幾つか案はあるんだけど」 ぼくのあげる店を御剣は頷きながら聞いて、 「きみは何処がいいと思う?」 「御剣が行きたいとこでいいよ」 「きみが勧めてくれるところにしよう」 ぼくに決定をおしつけてるんだか、ぼくを信頼してるのか、御剣は微笑んだ。 (多分、検事は考えるのが面倒なのでしょう。きっとフルコースしか食べたことないから普通の店がわからないのでしょう) 「きみの行きたいところに行こう」 異論はないだろう、といった様子で顔を傾けて。 その表情が可愛くて、ぼくはつい頷いた。 (御剣に可愛い、と言ったらこの時点で逃げられる筈。男に可愛いなど!!気持ち悪いとか) 「美味しい?」 ぼくの問いに御剣は頷く。 口に食べ物を入れているので、言葉は出さず、ただ頷くだけ。 だけど、それがとても可愛く思える。 「これも美味しいよ。食べてみない?」 御剣が返事をする前に、箸でつまむ。 口元に持っていくと、咀嚼した後、おずおずと唇を開いた。 「どう?」 ゆっくりと噛み、御剣は美味しい、と言った。 「きみはすすんでいないようだが?」 (あまり構われることにちょっとうんざり) 「うん。気に入ってくれてよかったよ」 御剣はぼくの食がすすんでいないことに気づいていた。 だって、御剣のご飯を食べるところって優雅で、それでいてすごく可愛いんだもん。 見つめずにはいられないよ。 それに、『あーん』って食べてくれるし。 御剣からしてくれないとこがちょっと不満だけども、彼はお堅い検事だから仕方ない。 それに恥ずかしがりやだしね。 (いい大人が何言ってるのかしら。サムイ…) ぼくは時折、御剣に笑いかけながら、本格的に食事にとりかかる。 「そんなに見たら恥ずかしいよ」 先に食事を終えて、御剣はテーブルの上で指を組んでぼくを見つめている。 そう言ったら、にっこりと笑って、 「きみは本当に美味しそうに食べるから、見ていて楽しい」 (なるほどくんは美味しいというのと、御剣が目の前にいることで、浮かれ気味で傍目から見てもオカシイ状態です。検事は半分呆れております) 「・・・なんか照れるな」 褒め言葉、としてとっていいんだろうけど、そんなに見つめられたら味がわからなくなってきた。 まぁ、御剣と一緒ならどんな料理も美味しく食べられるけどね! 「成歩堂」 「何?」 「ついてるぞ」 恥ずかしいなぁ、と口元を擦る。 「そっちじゃない」 「どこ?」 御剣が笑みを浮かべた。(仕方ないヤツと思っている) 「こっち」 白い指が伸びてきて、ぼくはどきっとした。 予想通り、その指はぼくの顎あたりを拭ってくれた。 「ほら」 御剣は楽しげに指をぼくに見せた。 「ありがと」 ぼくはその指をぺろり、と舐めた。 「なッ・・・」(この馬鹿、何てことを) (でも、人目があるので叫べない) 「ぼくのせいで汚れちゃったからね」 顔を真っ赤にして、唇を震えさせる御剣がとても可愛かった。 (罵詈雑言を出せないだけです、人前だから) ほんと、何だかカップルみたいだよね。 そんなことが脳裏に浮かんでしまって、また照れてしまった。 「ご馳走さま」 御勘定をすませて、外に出る。 寒くて、ぶるっと身体が震えた。 御剣は寒くないのかな? コートを着ているが、そんなに厚着にも見えない。 「寒いよー」 「なんだ、きみは。ほんとに寒がりだな」 御剣の身体にぴったりと寄り添う。 身体というより、心が少しあったかくなった。 「うん。早く帰ろう」 あたりまえのように、ぼくの家に寄ってくれるようになった御剣。 今夜も二つ返事で頷くだけで、隣に立っている。 「寒いねぇ」 ぴったりと身体を寄せたまま、玄関の鍵を開ける。 御剣をひっぱって室内に入る。狭い玄関でごそごそと靴を脱ぐ間も、御剣の腕から腕を離しはしなかった。 「泊まっていくでしょ」 ぼくは寒いけど、上機嫌でエアコンをつける。 もうすぐ部屋はあたたかくなる。 それに、その部屋には御剣がいる。 上機嫌にならない理由は何処にもない。 「飲む?」 否定しなかった彼の前にワインのボトルを置く。 ビールとか缶チューハイとか、何となく御剣に似合わないなあと思ったから。 御剣が来るようになってから、ちょっと洒落た酒を置くようになった。 「頂こう」 グラスを二つ、手に持って、向いじゃなくて、ぼくはその隣に腰掛ける。 御剣はその位置から動くこともなく、隣、という体勢を受け入れる。 彼にとってのぼくの位置はどんどん近くなっている。 「御剣、ぼくのこと好き?」 二杯くらい飲んだとき、何となく口から滑り落ちた言葉。 御剣は少し、首を傾げた。 (成歩堂は酔ったのだろうか、と考えている) さぁっと赤く染まった頬はアルコールの所為じゃ絶対無い。 それが、すごく可愛い、と思ってしまった。 「そう・・・嫌いでは・・・」 (嫌いになれるわけはないけれど、好きとも言いにくい。成人男性の台詞ではないと思っている検事) 「好き?」 ぼくは御剣からその言葉を聞くまでは引き下がらない。 「好き、だと思う」 (友人に対してわざわざ言うのはどうかと思っている御剣検事。言いなれないので少し恥ずかしい) 御剣はずるい。幾ら恥ずかしいからって、たまにはこうして言葉で貰わないと、さすがにぼくも疑いを抱いてしまう。 でも、こうやって、伏目がちに、そっと囁いてくれる時の表情は、そういう全部をこの一瞬だけで流してしまって、また、彼を更に好きになってしまう引き金となる。 「そう、よかった」 「それで、きみはどうなんだね?」 少しだけ濡れた瞳で、ぼくを見つめる。 何だかすごく色っぽいよ? 「どうって?」 「きみは私が好きなのか」 (成歩堂にも恥ずかしい言葉を言わせてやろうと思っている) どうしよう、すごく可愛い。 好きなことは当然なのに、言って欲しいんだ。 言葉を強請る御剣ってとても可愛い。 「言って欲しい?」 (絶対に成歩堂にも言わせる、と意地になる御剣) 「む・・・」 眉間に皺を寄せる御剣。 ちょっと虐めちゃったかなぁ。 「好きだよ。御剣。すごく好き」 「・・・ありがとう」 俯いて、小さく早口で。 その表情は、ぼくの前でだけ見せてくれる表情。 冷静沈着で威厳のある検事の顔なんて、どこにもない、無防備な可愛い顔。 「話をする時はちゃんと顔を見て?」 ぼくはわざと、彼の頬に手を添えて、上向かせる。 ばっと顔を横向けて、御剣は立ち上がる。 「風呂に入るっ」 「いってらっしゃい」 くすくすと笑って、ぼくは見送る。 御剣がいない間に眠る準備をする。 一応、他にも手段はあるけど、いつも一緒にベッドで寝ているから、テーブルの上の食べ残しとかグラスを片付けるだけ。 別にベッドで一緒に寝るのが窮屈ってわけでもないし、御剣が好きだから、傍にいると嬉しい。 それを矢張に言ったらどう返されるんだろう、と一瞬考えた。 例えば、ぼくは矢張と一緒に寝たいと思うだろうか。 彼も長い付き合いの友人だけど、一緒に寝たいとは思わない。 −やっぱり、ぼくが一緒に寝たいのは御剣だけだ 「おい」 耳元で声をかけられ、考え事をしていたぼくはびくっとした。 御剣はそれを見て、くすりと笑った。 「眠たいのか?」 「いや、ちょっと考え事」 風呂上りの彼の顔はほんのりと染まって、とても色っぽいと思った。 ・・・ぼくは御剣に欲情しているのかな 「ん。ぼくもお風呂はいってくる。電気は消してていいよ」 御剣が頷いて、ベッドにもぐりこむのを横目で眺めて、ぼくは浴室に向った。 さっぱりして、あたたまって、風呂から出た。 身体は兎も角、心はイマイチすっきりしない。 御剣のことがぐるぐると回っている。 布団の端をそっと持ち上げて、身体を潜り込ませる。 御剣が僅かに動いた。 「おきてる?」 「ん」 眠そうな返事だったが、起きてはいる。 寄り添って、ぼくは隙間が出来ないように御剣の腰に手を回す。 こういう行為も普通はしないかも知れない。 御剣は嫌がったことも、手をはねのけたこともないから、ぼくはこれまで気がつかなかった。 (成歩堂くんくらいしか親しいひとがいないので、彼がやることを全て友人のやることとして認識しているかわいそうな検事/笑) 信頼しきったような溜息が聞こえる。 首筋に触れた息にぼくはぞくっとした。 ちょっとだけいつもより力をこめて引き寄せる。 御剣の身体はすんなりと腕の中におさまった。 もしかしたら、御剣も? 「御剣」 柔らかな髪に顔を埋めるようにして、囁く。 ぴくっと肩が震えた。 「ん・・・」 何だか眠そうな声。 彼の背に回した手で滑らかな背中を上から下へと撫でる。 「な・・・なるほどう?」 掠れた声が色っぽい。 突然の行為に驚いてるんだろう。 「ひゃ・・・」 一旦ぼくは手を引いて、ローブの合わせ目から再び、挿入。 抱き寄せるようにして双丘の挟間を探る。 「く・・くすぐったい」 御剣が身体を捩ったせいで、合わせ目が緩んで、大腿部まで顕わになった。 びくっとはねた素足がぼくの足の上に乗っかった。 「ごめんね、御剣」 (御剣は悪戯を止めるのだと思って大人しくなった) ローブなんて、中々着てるひとみないよね。 わざわざ、ぼくと寝るのに着る必要もないし。 誘っていたことに今まで気づかないぼくはなんて鈍感だったんだろう。 こんなに色っぽいのに。 ローブの結び目をするっと引っ張った。 「な、なに?」 (ようやく止めて貰えるわけではないと気づく検事・・・) 「そんな顔したってもう駄目だよ」 とろんとした眼差しで、何も知らないって顔しても。 きみがぼくを好きなことはとっくに知ってるんだから。 「ね、ちゃんとしてあげるから」 夜目にも眩い白い身体を引き寄せる。 薄い唇に唇を重ねた。 甘い、キス。 大人しくなった御剣の頭を撫で、また、秘所を探る。 (単に酸欠です) 御剣から手を出してきたことはない。 ということは、ぼくが出すのを待っていたのだろう。 「や、駄目だ・・・」 「駄目じゃないでしょう。すぐに気持ち良くしてあげる」 やっぱりその部分を弄られるのは羞恥心があるのか、むずかりだした。 「暴れると傷ついちゃうよ」 ぼくもこんなことは初めてだから、そんなに自信もない。 せめて御剣にはじっとしていて貰いたいんだけど・・・ とりあえず、御剣の身体を押して転がして、その背をおさえて、ベッドに押し付けた。 といっても、そんなに力を入れたわけじゃない。 間違って窒息したらまずいでしょ。 ローブの紐で両手を後ろ手に縛り上げる。 両脚を割り開くようにして、ぼくの膝の上に引き上げた。 ぼくの身体を挟むように、彼の足が開かれる。 丁度下腹部に、双丘の間が。 開かれて丸見えになった秘所。 白い肌の間にぽつんと色づいた箇所。 濡らした指を差し込むと、御剣が喉を鳴らした。 (ここから、なるほどくんは夢中のあまり、御剣の声が聞こえてません) 指一本入るのもやっとな狭さ。 熱く、湿った内部。 ここに本当にぼくのが入るだろうか? びくびくとはねる身体を抑えながら、慎重に指を動かす。 内壁のきつさを確かめるように指を動かしていると、少しずつ奥へと進むことが出来た。 指を動かし、こねるように回す。そこが拡がるように。 緩んだ頃合を見計らって、二本揃えて中に入れた。 根元まで差し込んで、ゆっくりと指を中で開く。 裂けないように、そっと指を上下に動かしてみた。 くちゅくちゅと音が高くなり、抵抗も緩くなる。 三本目の指を入り口に触れさせる。 さすがに先端が入りこむときは薄い皮膚が裂けそうだと思った。 それでも、何とか奥まで挿入できた。 「凄いね、御剣・・・中から溢れてる」 もう、指が濡れてるのは、ぼくの唾液だけのせいじゃない。 御剣の中から、ぼくの指を伝って、ぼくの手を濡らす液体が零れ落ちて。 軽く抜き差ししても、壁の抵抗は最初程ではなくなった。 「もうそろそろ大丈夫だね」 指を引き抜くと、目に見えて彼の背中がベッドに沈み込んだ。 物凄く緊張しているみたい。 縛り上げていた紐を解く。 力なくベッドに落ちた手首に、痕。 「大丈夫?ごめんね。きつかった?」 手首をさすり、唇を押し当てる。 御剣はびくっとその手を自らに引き寄せる。 濡れた眼差しでぼくを見上げた。 目元が赤く染まっていて、とても可愛いと思った。 今度は彼の肩を押して、仰向けに転がす。 いつもは揺るがない眼差しは、初めての行為に怯えているようだった。 その様子がますますぼくの雄を奮い立たせる。 「いや・・・だ」 「大丈夫だよ。ちゃんと解してるから」 かぶりを振って、押しのけようとする御剣。 でも、その仕草は弱弱しくて、簡単に封じることが出来た。 「可愛いね、御剣」 額に口づけを落として、ぼくは腰を抱き寄せる。 今日、初めて知った場所に、ぼくの分身を押し付ける。 濡れた音、思い切って穿つと、意外にもあっさり先端が潜り込んだ。 「痛っ・・あ・・・」 硬直した身体。 「すぐになれるから、我慢して、ね」 ぼくも圧迫感に息をとめられそうになりながら、言葉を紡ぐ。 御剣は唇をわななかせて、のけぞる。 ゆっくり、ゆっくりと侵食する。 御剣の閉じた瞼から零れ落ちる涙。 白い顔の上を転がり落ちて、シーツに染みこむ雫。 「痛い?もうちょっとだからね」 奥まで飲み込ませて、ぼくは深い溜息をついた。 ぐったりとした御剣を抱き締めなおして、囁く。 「大丈夫?もう全部入ったよ。きみの中にぼくを感じて」 ぴったりと閉じた、秘所に触れると、ぎゅっと締め付けられた。 御剣のうめき声と、ぼくの声が一緒に上がった。 「感じちゃった?」 「い・・・や・・・」 そんなのも口だけだって。 だって、御剣のそこは、ぼくのを呑みこんで、離すまいってくらい締め上げてる。 震える身体をしっかりと抱きとめる。 初めてなんだから、優しくしてあげなきゃ。 「ゆっくり、動くからね」 ゆっくり、ほんとにゆっくりと腰をひいた。 御剣の手がぼくの腕にかかり、するっと滑り落ちた。 力なく落っこちたその手がぼくの欲を更にそそった。 あぁ、御剣を、いま、ぼくのものにしてる。 綺麗な顔を真っ赤にして、今にも泣きそうに眉をひそめて。 柔らかな唇が紡ぐのはぼくの名前。 「みつるぎ」 こういうときって、名前で呼んだほうがいいのかな。 中の熱を感じながら、ぼんやりと思った。 肉を打ち付ける音。 ぼくの鼓動と吐息。 そんなのより、御剣の声が聞きたい−。 「怜侍」 うっすらと驚いたように、彼は目を開けて、ぼくを見た。 「ねぇ、きみも呼んで」 掠れた声で、ぼくは懇願する。 揺さぶられながら、焦点のあわぬ目で、ぼくの視線を必死で追う御剣。 「ね、ぼくの名前、呼んで」 一際、奥まで突き上げる。 く、と御剣が声を漏らす。 「なるほど・・・う」 「違うよ」 滑りのよくなった内部を充分に堪能しながら、ぼくは意地悪く言う。 わざと身体を揺さぶって、中をかきまわす。 「あ・・・」 悲鳴のような吐息を、唇を重ねて吸い上げる。 「ね、言って」 「りゅ、ういちっ」 (兎に角、苦しくて仕方ない) 「あたり」 その言葉とともに、ぼくは彼の中に、思いの全てを吐き出した。 思ったよりも、簡単なんだぁ。 すごく気持ちいいし、どうしてこれまで思いつかなかったのか悔やまれるよ。 御剣の肌は上気して、初めてみる色。 彼の声も、あんなに色っぽいなんて思ってもみなかった。 「御剣、大好き」 滑らかで、しっとりした肌に手を這わせると、びくびくと初々しい反応がかえる。 そのたびに、彼の中に入り込んだ、ぼくのにも軽い圧迫感。 最初のきつい抵抗はなんだったんだろう、と思えるくらいに、どろどろになって、やんわりとぼくを包んでくれる、その内部。 まるで、ぼくの形を覚えてくれたみたいに。 どうなってるのか、ちょっと気になって結合を解いてみる。 突っ込むときに比べると、ちょっと呆気ないかなと感じるくらいの抵抗でぼくのはするっと抜けだした。 別に、緩いとかそんなんじゃなくて、締め付けられることはられたんだけども。 「や・・・」 羞恥からか、身体を曲げられる痛みからか、御剣が声を上げる。 大腿部を抱えあげ、膝を曲げさせて、そこを覗き込む。 「わぁ」 指一本も入らない程に閉じていたそこは、その周辺一体を含めてべとべとに汚れていて。 ぼくがびっくりしたのは勿論、その濡れてることとかじゃない。 白濁が零れるそこは、中の肉が見える。 小さく、呼吸をするように開かれている。 指でおしひらくと、もっと奥まで見えた。 ぼくの熱がこもる。 ぼくが汚してしまった薄いピンク色の内壁に、また欲情を感じた。 「開いちゃってるね」 呟いて、その言葉に自分で納得した。 ぼくが咲かせた花。 ぼくが育てた。 「物足りないの?」 収縮した内壁がぼくの指を軽くしめてきた。 「大丈夫。零れ落ちないように、塞いでおいてあげる」 ぼくの思いが、きみの思いが、零れ落ちないように。 足りないところに足りたものを。 再び、勢いを持ったぼくの分身を濡れた場所に導いた。 濡れた歓喜の音がして、色づいたそれが顔を隠す。 御剣の身体を抱き締めて、ぼくは目を閉じた。 彼の体温に、吐息に、内部の心地よさ。 宥めているうちに落ち着いたのか、御剣の身体が弛緩した。 (単に気を失ったのでは?) 指に髪を絡め、朝陽の中で見る彼はどんなに綺麗だろう、と思いをはせているうちにぼくも眠りへと落ちていった。 |