某A氏からのメールより突発妄想 ベッドの上で豹変する御剣の話。通常版とは違う豹変をかいてみたくなった(笑) ぼくの恋人はベッドの上では豹変する。 ―そんなことを言うと、きっと世間のひとは誤解する。 そして、そんな『誤解』と同様な豹変だったら、ぼくは全然苦労なんかしなくていいのに。 と、考えて、ちょっと落ち込む。 「御剣」 ぼくの綺麗な恋人。 追いかけて、ようやく手にいれた、自分の人生そのものより、ずっと大事なきみ。 「なるほどう」 柔らかな声で、ぼくの名前を呼ぶ。 しどけなく、ベッドに身を横たえて。 色違いの春色のパジャマを着た御剣。 今夜はぼくのパジャマと同じ色のイルカを抱っこして丸くなっている。 「御剣」 うさぎやらかえるやらくまやらなんやらのパイル地の大きなぬいぐるみがベッドの至るところに静置されてる。 最初は勿論びっくりしたよ。 あの、天才検事御剣怜侍がぬいぐるみを抱っこして眠ってるのを見て驚かない人間がいるもんか。 せめて、恥ずかしがるとかすれば、何となく理解は出来たと思う。 全く持って、そんな様子はなくて。 ベッドの上にいる御剣は別人格だと思ったほうがいい。 初めて一緒に眠ったときに、ぼくはそう結論づけた。 まるで純粋な子供みたいに、ベッドの上の御剣はちょっとのことで笑う。 本当に楽しそうに、可愛い顔で笑うんだ。 御剣の横にもぐりこむ。 ぬいぐるみを抱っこした御剣の髪を撫で、額にキスを落とす。 少し頬を赤らめて、御剣は嬉しそうに微笑む。 普段からは想像できないくらい、ベッドの上の御剣は素直にぼくに甘えてくる。 肩に顔を埋めて、ぼくの手を握って、幸せそうに笑う。 ・・・昼間の御剣になら、もっと深いキスも出来る。 でも、初めてベッドを共にして、手始めに、と思って深く口づけて、舌を差し入れたら、御剣に半泣きで拒絶された。 そういうキスが気持ち悪いといって、御剣はぼくの腕から逃れようとして激しく暴れた。 ぼくはあまりのギャップにどうしていいかもわからずに御剣に謝って、もうしないって約束するしかなかった。 同様に御剣からぬいぐるみを引き離すことも無理で。 頑として御剣はぬいぐるみを離さない。 それを抱いてるときはとても寛いだ様子で、幸せそうだから、そういう御剣は可愛いんだけど。 なんだか、ぼくの存在価値って何だろうと思うぼくもいるわけで。 だって、ぼくよりぬいぐるみのほうが御剣を癒せるってそういうことだろう? 「御剣、ぬいぐるみ邪魔」 御剣の身体を抱き寄せて、ぼくは出来るだけキツクならないように御剣に話しかける。 もうこの状態で半年くらい。よく持ったよ、ぼく。 「邪魔?」 御剣はぼくの顔を見上げて、少し困った顔をした。 「もっとちゃんときみを抱きたいけど、ぼくときみの間にぬいぐるみがあるとね、出来ないんだよ」 「駄目?」 「・・・御剣、ぼくとぬいぐるみどっちが好き?」 御剣はとても困った、というより泣く寸前の顔をした。 「ぼくは世界で一番御剣が好きなんだけど、御剣は違う?」 「成歩堂が好きだ」 御剣はぎゅっと腕の中のぬいぐるみを抱き締める。 「でも・・・成歩堂はいつもいるわけじゃないから」 「え?」 「きみがいないときはどうすればいい?」 御剣は寂しかったんだ。 それはぼくもわかってたはず。 ぼくも、御剣に逢えるまで寂しかったけど、御剣の孤独感はぼくのそれとは桁が違う。 ぼくには御剣という追い求めるひとがいたけど。 御剣は目の前で大切なひとを失って、そのあと、ぼくみたいに焦がれるような相手に出会ってもいなくて。 ・・・逢ってなくて良かった、とひどいことをぼくはちょっと思った。 もし御剣に誰かそういうひとがいたら、ぼくの恋人になんてなってくれなかった。 「御剣。ぼくはずっときみと一緒にいるよ」 御剣の手をぎゅっと握る、 「いなくなったりしないから、ぼくを選んでくれないかな」 数分後、御剣はぼくの胸元にしがみつくようにして寝入っていた。 とりあえずぬいぐるみに勝つことは出来た。 でもね、あんまり純真な顔で眠るから、またもや手を出すキッカケを失っちゃったよ・・・。 |