Pillow talk SIDE N 御剣がいないと不眠な成歩堂についての突発妄想の続き。 Pillow talk side Nの一話目を先に読んで下さい。 「御剣がぼくと寝るのつまらないって言うんだ」 「・・・はいぃ?」 オレそんなに酒飲んだっけ?と矢張は、気を取り直してもう一度繰り返させた。 「だから、御剣が、ぼくと寝るのはつまんないから、って中々一緒に寝てくれないの」 「・・・成歩堂ぅ、え、お前ら、そういう関係だったの?」 「どーしたらいいと思う?」 成歩堂はグラスを片手に、机に頭をつけて、アルコールで上気した顔で溜息をつく。 「どうしたらって、お前」 落ち着け、と矢張は自分に言い聞かせる。 そうだよな、別に今時オカシクないよな。 ていうか、コイツの御剣への執着考えれば全然オカシクない。 気づかなかったオレが間違ってた! 「ごめんよぅ、なるほどう〜。お前の悩みに気づかなくて」 恋愛話になるとハイテンションになる矢張は俄然、張り切った。 「矢張〜。わかってくれるのか〜」 「おうよ。で、どっちがどっち?」 好奇心もあって、とりあえず疑問を口にする。 「へ?どっちて?なにが?」 「何言ってるんだよ。お前が御剣抱いてるの?」 「へ。あぁ。そういうこと?そりゃそうだよ。でなきゃ、御剣がつまらないって言うわけないだろ」 「あ、そうだわな」 にしても『つまらない』と言い切ってしまう御剣ってある意味すごいなぁと矢張はぼんやりと思う。 その上、そんなこと言われても全然傷ついてるようには見えない成歩堂もちょっと凄いと思った。 「何かいい案ある?」 「そ〜だな〜。いつもどんな感じなん?」 「いつも?あぁ、ぼくの家でだけど?」 「場所かえてみるとか?簡単に」 ホテルとかさぁ、と矢張が言うと成歩堂は首をふる。 「駄目だよ。どっちも落ち着かない。ぼくもだけど、御剣、出勤に困るし」 「あ〜、そう〜。じゃぁ、ベッド以外とか」 「あのな。ぼくはどこだっていいけど、御剣がどう応えるか考えて言ってくれよ」 「そうだなー。アイツ、あまり器用じゃないし。どっか痛めそうだよな」 名案、と矢張が手を打つ。 「風呂とかは?一緒入ったりしてんの?」 「狭いでしょ。御剣が嫌がらなきゃ入ってもいいけど。・・・御剣が嫌がらないコト、というか、御剣が好みそうなコト言ってくれよ」 「身体洗ってやったりとかしたらいいんじゃねぇかと思っただけさぁ」 「髪は乾かしてあげてるけどね」 「ふぅん。な、御剣ってどんなカンジ?」 「どんなって?髪の手触り?」 「馬鹿。んなんじゃなくて・・・別にそれでもいいけど・・・もっと具体的にだよ」 「髪はさらさらだよ。ちょっとくせっけだねぇ」 「だから、髪はどうでもいいんだよ。抱き心地とか・・・」 「あぁ!なるほど。すごくいいよ。御剣っていい匂いするし。最高の抱き心地」 「へぇ。どんな反応?」 「嫌がってはないと思うけど・・・うん。心底、嫌なら来ないと思うんだけど」 「なんだよ。歯切れ悪いなぁ」 「だってさ、『つまんない』だよ!」 「そうだったな」 「ぼくと一緒じゃ休めないって言うし」 「お前、しつこ過ぎなんじゃないか」 「しつこいか?毎日だっていいのに、御剣が来てくれないから、週一とかなんだよ?」 「あーしゅういちね〜」 「週末一緒にいるのもつまらないって言うし」 「あ〜そりゃ、嫌われてるんじゃないか〜」 「お前ね、ちょっとは慰めろよ」 「はいはい。でも、アイツはお前のとこに来るんだろ?口で言うだけだって。もともとそういうヤツじゃないか」 「そうだけど・・・つまらないってのはきっと本音だよ」 「お前のことは好き、だけど、お前と寝るのはつまらない、ってことだよな」 「うん、そして疲れがとれないって」 「仕方ないよな。それでも、御剣は来てくれるんだろ?愛されてるじゃん」 「どうしたら、御剣も満足させられると思う?な、矢張!」 「ちょ、苦しいってゆさぶるな」 「あ、ごめん」 「落ち着けないからかも知れないだろ。お前の家じゃ」 「・・・う〜ん。狭いから?」 「ベッドとかもさぁ、御剣なんかすごくふわふわでレースとか天蓋っての?そういうのついてるのに寝てそうじゃん」 「あぁ、そんなカンジだよね」 「そんなカンジってなんだよ。お前、御剣の家いってないの?」 「御剣の家で寝たことはないよ」 「よし。じゃぁ、そこからだ」 「そこって何処だよ」 「お前の家じゃ落ち着かない所為かもしれねぇだろ。だから、お前が御剣の家にいけばいい」 「御剣の家なら、御剣も心が休まるってことだな」 「まぁそんなとこだろ。それでも駄目なら、『つまらない』ってとこから解決しなきゃな」 「確かに」 「つまらない、ってお前、どんなことしてんだ」 「べつに、普通に抱いて寝るだけだよ」 「そこんとこは何ともならないのか?話し合ってさぁ、いろいろチャレンジしてみたら?道具とか」 「枕とか?」 「あぁ、枕ね・・・ってそこじゃねぇ!マジボケかよ」 「だからね、あまり落ち着かないのは御剣が嫌いなんだってば。音楽とかアロマとかライトとかも駄目だからな」 「ま・・・ぁ、そんなムーディなのも駄目なんか」 「苛々するみたいだね。ぼくはどうでもいいとこだけど」 「お前、大雑把なんじゃねぇの。優しくしてんのか?」 「当たり前だろ。嫌われたら困るんだから。御剣が痛いとかきついって言ったことないよ」 「そう・・・ならいいけどさ」 「とりあえず、次は御剣の家にいってみる」 「そうだな」 「ありがとな」 「いやいや。そういう相談ならいつでも任せろって。オレもお前も御剣も親友だろ」 「ははは。そうだね」 「そうだろ。かんぱーい」 「かんぱーい」 幼馴染二人は音高くグラスをあわせ、仲良くそれぞれ飲み干した。 |