罪と罰とその結末 『「御剣、好きだッ」 ぼくの部屋で、二人きり。 いい雰囲気で、御剣も寛いでて。 これまで抑えてきた思いをもう留めておくことが出来なくなった。 まるで噴出するマグマみたいに、爆発した感情。 御剣が好きで、もう一度会いたくて。 逢って、また別れて、ようやく本当に理解出来て。 好き、という感情が友人に対するもの以上だったのだとようやくその頃気がついた。 気がついたから、といっても小心なぼくは御剣にそれ以上を言うことも出来なかった。 嫌われるのは怖い。 何より、また逃げられるのが怖い。 御剣に逢えなくなるのが怖い。 もう、きみなしじゃいられない。 「御剣」 何が何だか判っていない様子の御剣の表情。 ぼくはその身体を抱き締めて、勢いで押し倒す。 「御剣、好きだ」 キスをしようと顔を寄せる。 御剣がもがいて、見当をはずした唇は頬に触れた。 滑らかなその具合にぼくの勢いは増した。 高価なスーツに手をかけて脱がそうと、 「ぐ・・・ぅ・・・」 目の前が白くなる。 星が回る。 腹部を押さえて、ぼくは丸くなって崩れ落ちる。 御剣の膝が見事に決まった。 苦しんでるぼくの身体の下から彼はすんなりと抜け出した。 「成歩堂、貴様という男は」 怒りを含んだ声。少し呆れも混じっているかも知れない。 「弁護士という職業についていながら、犯罪行為を働くとは。見下げ果てた」 「は、はんざい・・・」 ぼくは現在の身体の痛みより、御剣の言葉が痛かった。 呆れ果てちゃったんだ。 ぼくのことなんか、もう見限っちゃうに違いない。 「ぅ・・・」 「・・・どうして貴様が泣くんだ」 「ごめん・・・みつるぎ、だから」 「泣きたいのはこっちだ」 「謝るから、二度としないから」 御剣のぼくを蔑んだ目を見るのは怖かった。 けれど、視線を合わせずに謝罪するのはいけないことだと思った。 勇気を絞りだして、見上げる。 綺麗な顔は怒りの表情しか浮かべていないけれど。 よぅく見ると、困惑もしている。 「許して。ぼくを、捨てないで」 「捨てる?」 本当に意味がわからない、という顔で、御剣は首を傾げる。 「消えないでくれ」 「わ、離せ」 御剣の足にしがみつく。 コアラみたいに。 「ごめん。御剣ぃ。二度としません。だから友達やめるとか言わないで」 「ななな、情けない!泣くな!」 「うえ・・・ぇ。だって」 「わかった!見捨てない!何処にもいかない」 号泣しだしたぼくを見かねたのか呆れ果てたのか、御剣の声から怒りが消えた。 ぼくは安心して、もう少しだけ泣いた。 「きみは、ほんとうに、想像しがたい行動をとるな」 「それは褒め言葉?」 そんなわけないだろう、と御剣は呆れ顔で少しだけ苦笑した。 苦笑でも、御剣が笑ってくれたことが嬉しくて、ぼくは気持ちが晴れた。 「ぼくはきみが世界で一番好き。覚えててね」 御剣に殴られた。 でも、軽くて、痛みは全くなかった。 じゃれてるようなその行為が嬉しくて、頬を押さえて、ぼくはまた笑った。 |