101回目 「御剣、結婚しよう」 「嫌だ」 キッパリといつものように断られた成歩堂。 ここで、きまって駄々をこねる。 そこまでは変わらなかったのだが− 「ねぇ、どうして嫌なの?ぼくが嫌いなの?違うよね、好きだよね、ぼくのこと。ぼく、御剣のことすごく好きだから一緒にいたいのに。御剣は一緒にいたくないの?」 「きみのことは嫌いではない」 「きみにつりあうように、ぼくは弁護士になったのに。きみほどじゃないけど、そこそこの人並みな収入はあるから、きみに迷惑はかけないよ。もしきみが仕事辞めたって養ってあげられるし」 「私は検事を辞める気はない」 「わかってるよ。きみに専業主婦、主夫か−になれっていってるわけじゃないから。きみは今までどおり好きにしてくれて構わないよ。ただ、ぼくは形が欲しいんだ」 「・・・成歩堂、聞き飽きた」 御剣は溜息をついて、読んでいた新聞をぱさりと閉じた。 「答えは変わらない。NOだ」 「どーしてだよ。きみが気にするのは何なの?世間体?ぼくは世間なんて気にしない。きみを手に入れるためなら何だってするし」 「それはよくわかっている」 「ねぇ、結婚してよ」 いつも以上にしつこくて、成歩堂は御剣の身体を抱き締めて、離さない。 「しつこい。どうして、結婚にこだわる?私の言葉では駄目なのか。信じられないのだろうか?」 「愛してるって。好きだって言ってくれてもね、証が欲しくなるんだよ」 「こうやって、キスして、抱き合って、それが証ではないのだろうか」 御剣が成歩堂の唇に指をあて、一瞬だけ黙った彼に口づけた。 「御剣・・・」 成歩堂の眼にじんわりと涙が浮かぶ。 そっと御剣の身体を離した。 「うん。今日は諦める。また、明日」 「また明日って・・・」 絶句している御剣に向って、成歩堂は極悪なほどに爽やかな笑顔を浮かべて見せた。 「勿論、きみがyesって言ってくれるまで言い続けるよ。明日は言ってくれるよね」 翌日− 御剣は朝一番に成歩堂からプロポーズを受けた。 「御剣、結婚しよう」 「・・・まずは、おはようではないのか」 髪をかきあげ、御剣はうんざりした表情を浮かべた。 「だって、今日は101回目のプロポーズだよ!絶対、御剣は結婚したくなる日だもん」 「・・・?」 「ね、結婚しよう」 成歩堂の手には一枚の書面。 「・・・!」 「あとはきみの印鑑だけだよ」 成歩堂は自信に満ち満ちた様子で御剣を見つめる。 御剣はあまりの展開に、『法廷でもこのくらい自信に満ちてればいいのに』とぼんやりと考えるのが精一杯だった。 「印鑑押してくれるまで、離さないから」 「やめろッ」 全体重をかけて、のしかかってきた成歩堂にベッドに沈められて、御剣の悲鳴があがった。 「あはは」 暴れる御剣を押さえつけて、成歩堂は楽しくて幸せで笑った。 「幸せになろうね」 「馬鹿者ッ」 |