成歩堂 the swine 成歩堂が新年なので猪です。どっかで見たよーな設定だな?ぱくり?とか思われたりして・・・ ヘッジホッグの原案(笑)はさくらんうさぎなので御容赦ください。 このネタ自体も既にあさかさんには話してるので。 年の瀬、少々いそいでいたかも知れない。 目の前に飛び出した小さな影。 慌ててブレーキを踏む。 間に合わない―衝撃。 人ではないことはわかっていたが、それでも動揺する。 車を端に寄せ、はねてしまった動物に近寄る。 犬か猫か、兎に角病院に運ぼう。 血は出ていないようだ。 「?」 なんだろう、この生き物。 丸っこい、縞のある生き物だ。 犬でも猫でもない。 呼吸をしているようだったので生きてはいる。 抱き上げようとして― 「ッ」 なにか刺さった。 刺さったというより、刺激か。 もう一度、そっと表皮に触れてみる。 硬い毛だ。 私は上着を脱いで、それを包んで持ち上げた。 カーナビから動物病院を探し、電話をかけるが、年末だけあってどこも繋がらない。 ようやく繋がった病院は運良く、その謎の動物でも一応みてくれると言ってくれた。 「これなのだが」 私は上着に包んだその生き物を院長に見せる。 「あぁ、これは猪ですよ」 「猪?」 「子供のうちは模様があるんです。それにしてもこのあたりで猪をはねるとは珍しいですよね」 「大丈夫だろうか」 「猪は丈夫なのでね。単なる脳震盪でしょう。それより、貴方の車と上着のほうが」 「・・・」 そういえばかなりバンパーがへこんでいた。 交換だな、と思っていたが猪のほうは全く平気なのか。 丈夫な、うたれづよい生き物だな。 「この猪はどうします?売れば修理代にはなると思いますよ」 笑いながら院長はそう言った。 「いや、同じ場所で離してやろうと思う」 ぴくぴくと、猪が痙攣した。 起き上がった。 「元気そうですね」 む、目があった。 意外とつぶらな瞳でこちらを見ている。 「はねてしまってすまなかったな。身体は平気か」 きゅーと猪が鳴いた。 彼―猪は雄だったので―をはねてしまった場所に戻り、車から降ろす。 「さぁ、行け」 彼はきゅーと鳴いて、私を見上げる。 「そろそろ日がかわる。お前が帰ってくれなければ、私も家に帰れない」 何故、こんなに人懐こいのか。 野生のはずなのに・・・ 私が背を向けて車にむかうと、とてとてと後ろをついてきた。 「こら」 ついてくるな、と怒ると、恐縮したようにきゅーと鳴いた。 テレビから流れる、除夜の鐘。 「年を越えたな」 きゅー、とテーブルの真向かいにのっかった猪が鳴いた。 結局、つぶらな瞳に負けて、連れて帰ってしまった。 年越しの蕎麦をすする。 猪が鳴くので、小皿にいれて与えてみた。 「美味しいか?」 猪はきゅーと鳴く。 「なるほど、美味しいのか」 猪にとっても蕎麦は美味しいのか。 雑食というのは本当だな、と思った。 「では、お前の名前はなるほどにしよう」 成歩堂がきゅーと鳴いた。 |