その声もその指先もその眼差しも 『ぼく、成歩堂龍一。今年高校生になったばかり。順調な生活だけど、ひとつだけ悩みがある。目下の悩みの種は、今、ぼくの前で寝顔をさらしてる幼馴染の御剣。普段のきりっとした隙のない御剣しか知らないひとが見たらびっくりするに違いない。無防備で、可愛い顔。そう、問題はコイツのことを可愛いと思ってしまうぼくで・・・』 と、そんな悩みを抱いてたのは嘘みたいなハッピーエンディング。 なんと御剣もぼくのことが好きで、両思いってことがわかった。 ・・・だからといってそれからも関係には何の変化もないんだけど・・・ えぇっと、ぼくのほうもある意味では変化がない。 だって、御剣を・・・そのおかずには、前からしてたし・・・罪悪感がちょっと減ったくらいかな。 ・・・さすがにこの年で御剣にどうこうって妄想こそしても、実際に手を出す気力はおきない。 御剣はそこまで思ってないだろうし、潔癖だから嫌われちゃうかも・・・ 「御剣」 御剣は返事をしない。 本日の御機嫌は宜しくない。 それは返事をしないことでわかるんじゃなくて、態度だけど。 久しぶりに、一週間ぶりに会えたのに、手を伸ばしたら距離をとる。 下心を持って近づいてるわけじゃない、そりゃ多少はあるけど、何かしようなんて思ってないのに、とぼくは寂しい。 隣に座ると、ぼくと逆側に移動する。 機嫌が悪くなった理由もわからない。 そう、家に来いって誘ったのも御剣なのに。 午後一で遊びにきてみると、御剣の機嫌はよくなかった。 寝起きのせいじゃない。もう起きてから何時間もたってる感じだった。 どうやら図書館にでも行ってたよう。机の上に本が重なってた。 それは推察できるけど、御剣の機嫌が悪くなった理由は図書館とはどうしても結びつかない。 御剣のほうに身体を寄せると、御剣は立ち上がってしまう。 「御剣」 少しきつく言ったかな? 御剣がはっとした顔でこちらを見た。 けど、すぐに無表情になって、視線をそらした。 「どうしたの?」 優しく、問う。 御剣を万が一でも泣かせたら、後悔する。 もう泣き顔は一度っきりで充分。 「御剣」 手を引いて、少しだけ、強引に座らせた。 横から細い身体を抱き締めて、ぼくはちょっと幸せ。 「御剣、逢いたかった」 ぎゅ、と少し強く抱き締めた。 「逢いたかった」 一週間の帰省。一緒についていっちゃおうかと思ったくらい長い時間に思えた。 ようやく両思いになったばかりなんだもん。 「御剣、好き」 「・・・本当か?」 「本当だよ?何言ってるの」 御剣の声色は、甘い問いかけとかではなく、苦しそう。 ぼくはびっくりして、その顔を覗き込む。 「私がいない間・・・きみはなにをしていた?」 「きみがいない間?・・・ぼくもちょっと田舎にかえって」 御剣より先に帰ってきたから、矢張たちと遊んだっけ。 ・・・ ぼくの顔が少し赤くなった。体温も少し上がった。 御剣は即座にそれに気づいたっぽい。 ものすごい勢いでぼくの身体を突き放す。 「・・・やはり、女性のほうがいいのだろう?」 え、バレたの・・・?誰が言ったんだよ。 ちょっとした好奇心、例のビデオ鑑賞のことだよね・・・。 誰に知られても恥ずかしいけど、御剣に知られるほど恥ずかしい、と気まずいことはない。 あの場の約束で誰にも秘密ってハズだったのに。 「御剣・・・わぁ」 クッションが投げつけられた。 時計が投げられる前に逃げるべきか、と一瞬だけ思ったけど。 「御剣」 手を伸ばして、御剣を捕まえた。 ぼくを押しのけようとするのか、ひっかこうとしているのか、攻撃的な手をぎゅっと握って。 とりあえず御剣ごとベッドにダイブ。 「ッ・・・成歩堂ッ」 「御剣、ぼくは、きみが好きだよ」 「どうだかッ・・・誘われたらきっと、断らないんだろう」 「浮気したわけじゃないよ。単なる映像じゃん」 あ、そうだよね。映像だ。 自分の言葉で自分で納得。 それだけで、御剣が嫉妬してると思ったら、何だか更に御剣が可愛く思えてきた。 そしたら、余裕も生まれた。 よく考えると、すごく美味しい状況。 御剣をベッドの上に押し倒してるんだよ。 ヤバイ。余計なことを考える前に御剣をなだめなくちゃ。 浮かびかけた妄想を必死で追い払って、ぼくは真面目な表情をつくる。 「映画見るみたいなもんじゃん。ね、御剣が嫌ならもう見ない」 動かなくなった手を離して、御剣の頭を撫でる。 そのまま手を滑らせて頬を撫でる。 「ねぇ、許して。何なら一緒に見ようか?」 「見ない!」 「そうだね、見ても別に面白くもなかったし」 少しも変わらなかったといえばそれは嘘だけど。 演技をしてる女優より御剣を見てるほうが何倍も魅力的だ。 それに、妄想の中の御剣のほうが・・・ずっと・・・ぼくの。 「おかずにもなんないし。たたなかったし」 いかに映像が何でもないものかを説明しようとして、ぼくは墓穴を掘っていた。 御剣が怪訝そうな顔をした。 「おかず?」 「・・・何でもない」 知的欲求の強い―御剣が追求の手を緩めるはずもなく― ぼくはいろんなことを白状させられることになる・・・ 「おかずとは何だ」 「きみのことを考えながら・・・することだよ」 「何をするのか」 なにってそりゃ、きまってるだろ。 と思ったけど、御剣は本当にわかってないっぽい。 ぼくが口ごもっていると、言えないようなことなのか、と不機嫌さがみるみる増していく。 言えない、のは恥ずかしいからで、それ以上でも以下でもないけれど。 御剣は隠し事があるのがひどく気に入らないのだ。 ぼくが答えるのが遅ければ遅いほど、御剣は余計にいろいろと考えて、勘ぐって、ぼくの御剣への思いに疑いを持つようになる。 自信家にみえて、そういうところはあまり自信がないみたい。 ぼくが御剣を嫌いになるわけなんてないのに。 宥めて、安心させてあげるのはちょっと手間だけど、そういう御剣も可愛いと思うので、ぼくも大概終わってる。 「わかんないかなぁ」 御剣が顔を赤くした。 それはぼくの言った意味がわかったからではなくて、『わからない』といわれたことにちょっと怒ったみたい。 「わかれば聞くものか!」 本格的に拗ねた。 ふい、と顔を背けた御剣。 そうだよね、御剣、自慰とかしそうにないし。 ・・・というか、まだかも知れないよね・・・ 御剣、綺麗で可愛いし。 声だってあんまり変わってない。肌もつるつるしてて。 所謂、明らかな二次性徴、はしてないかも。 「御剣?」 ぼくはそっと手を伸ばして、頬に触れる。 滑らかで、気持ちいい、白い肌。 何処もかしこもこんな風に触れると気持ちいいんだろうな。 「重い」 「あ、ごめん」 御剣はぼくを見上げる。 少しだけ怒りを含んだ瞳。 薄い唇を噛み締めて、ぼくを見る。 「まだ怒ってる?」 「・・・怒ってる」 「ごめんね」 「・・・」 「御剣、大好き」 ぎゅ、と抱き締めたら、また『重たい』『苦しい』と文句を言われた。 だから、ちょっと身体をずらして、横に寄り添う形で抱き締めなおす。 「苦しくない?」 もうちょっと抵抗されるかと思ったけど、意外と大人しく御剣はぼくに抱き締められてる。 「好き。御剣」 何度も繰り返してると、呆れたのか、根負けしたのか、御剣の表情が緩む。 「・・・成歩堂」 「何?」 「先程の続きだ」 「何?」 御剣の声は通常モードに戻ってる。 いつもより甘いかも。 怒りがとけたあと、気まずさからか、無意識に気を引こうとするのか、そういうときの御剣の声。 甘ったるいというわけじゃなくて、ぼくだからわかる、微妙な違い。 「答えてくれないのか?」 なんだっけかな。 ぼくはもう、抱っこした御剣の感触に夢中で、気持ちいいくらい先程のやりとりは忘れてた。 ・・・忘れたかったのだと思う。 だから、それは不意打ちだった。 おかずとは何だ?と見上げてくる御剣の表情と仕草がたまらなく可愛くて。 ぼくの股間が熱くなった。 「知りたい?」 ぼくの声は少し掠れている。 御剣は返答次第で困ったことになるかも知れない。 でも、正直、このままおさまりそうにないし。 いつかは、と思ってるんだから、御剣に見られるのは困らない。 ―御剣に見られる、ということを考えただけで、また、分身が疼いた。 「成歩堂?」 どこか痛いのか、と御剣は心配そうな表情になった。 「痛くないよ」 「で、御剣、ぼくがどうやってきみをおかずにするか知りたいんだよね」 「え?な、なるほどう!?」 御剣の声が上ずっていて、ちょっと可愛い。 ぼくは力を帯びたそれを引っ張り出す。 御剣は目を見開いて、そして、真っ赤になって顔を背けた。 「な、なにを・・・ふ。ちゃんと着たまえ!」 「おさまらないとキツイもん」 きみが見たいって言ったんじゃないか、とぼくはにっこりと笑ってみせた。 恥ずかしかった気持ちは薄れていく。あまりにも初心な御剣の様子に、逆にぼくはエロオヤジみたいだなぁと思ってしまう。 「ね、きみを思うとこんな風になるんだ」 「・・・」 御剣は目を閉じてしまった。 そんな風に無防備でいいのかな。全く危険性を感じてない、御剣。 まぁ、ぼくだって無理矢理何かしようとは思ってないからいいけど。 御剣はぼくを信用しきってる。そういうことでよしとしよう。 「きみはきっとまだだよね」 右手でぼくは自身を掴み、左手で御剣の頬に触れる。 滑らかな頬はすごく熱い。 「・・・なるほどう」 「目を開けてよ」 長い睫がぴくっと動いて、恐る恐るといったふうに瞬きをした。 ぼくの下半身を視界にいれないようにか、ぼくの顔をじっと見る。 困惑した表情で。 「・・・それは・・・どのくらいで」 「シてもいい?」 「う・・・そのままだとどうなるのか?」 「辛いなぁ。だって、きみがここにいるのに。何もせずにおさまるわけないじゃん」 映像とか写真とか妄想じゃなくて、生のきみが。 「大丈夫。きみに手を出すわけじゃないから、ね?」 優しく頭を撫でて、軽く引き寄せて。 腕の中の御剣の香りを吸う。 甘くて柔らかな、匂い。 片手で軽く御剣の身体に触れながら、ぼくは軽く自身を扱く。 興奮していたからか、早めに達した。 長く御剣を恥ずかしがらせるのも可哀相だ。 まるで子兎とか子猫みたいにふるふると震えてる。 ゆっくりと腕を解いて、ぼくは起き上がる。 ねばついた液体をティッシュで拭った。 振り返ると、御剣も起き上がっていて、ぼくを見つめている。 「痛くないのか?」 「え?」 「・・・辛そうな顔にみえた」 「全然痛くないわけじゃないけど、痛いってより気持ちいいよ」 張った感覚とかはちょっと痛いよね。でも総じて気持ちいい。 快感の表情と苦痛の表情は似てるらしいから、御剣はぼくの様子を苦痛だととったみたい。 過ぎた快楽は苦痛だともいうし、苦痛を快楽に変換するひともいる。そのふたつは似てるんだろう。 「苦しくないわけはないけど」 ぼくは御剣の隣に座る。 ぎゅっと抱き締めて、耳元で囁く。 「だって、目の前に恋人がいるのに、手を出せないんだよ?」 手を出す、出さないの意味がわからないほど、御剣は子供じゃない。 「ま、まだそういうのは・・・早いのでは・・・」 しどろもどろして、俯いてしまう。 「うん。早いよね」 あっさりとぼくも肯定する。 年齢もさることながら、何より、御剣はまだ心の準備はおろか、身体も大人になってない。 まだまだ先は長いんだから、御剣がしたくなったら、でもいいくらい。御剣はぼくが好きだから、他のひととは絶対にしないし。 御剣がどうしてもしたくない、のなら無理を通すつもりもない。だって、ぼくは御剣が好きだから。 「大人になったら、しようね」 ぼくは御剣の柔らかな髪に顔を埋める。 「・・・浮気も勿論しないよ。ビデオも見ないから。きみを思ってするのは許してよね」 そういうわけで、本人の了解も得て、ぼくは全く後ろ暗いところなく、処理出来るようになった。 御剣を抱き締めてて催したら、そのまま自慰してみたりとかも。 今はまだ羞恥心が強くて、御剣は目も開けられない状態だけど。 そのうち服を脱いでくれたりとか、直接、肌に触らせてくれたりとかしないかなぁと期待してるぼく。 御剣自身がそのまんまクリティカルヒットでぼく好みだけど、そういう性的な面はまっさらな状態だから、うまくすればぼくの嗜好に合うように育成できたりするのかな。 そんな企みも抱いてみるだけなら、罪じゃないよね? |