割と久々に、成歩堂は御剣と街に出掛けた。 左右に様々な店が並んでいる通りは、人が多いが新しくオープンした所も多い。 「そういえば、あそこに前あったのって何屋さんだったっけ」 「……」 きょろきょろと見回しては思った事を述べてくる成歩堂。御剣はそんな彼とは違って、人のざわめきの中で口を開くのが好きでは無い。そもそも『人ごみ』というのが欝陶しいのだ。 そんな訳で大した返事もしなかった所、急に成歩堂が立ち止まった。 「ここ、昨日にオープンしたんだって!」 言われてそちらの方を見ると、天然石を扱ったアクセサリー等を販売している店だ。 内装は明るく、様々な色の石やペンダント、ストラップといった商品が所狭しと並んで輝きを放っている。 「へ〜、なんか見た事も無い石とかもあるよ」 なんとなく興味を持った成歩堂は、店に近付いて棚の上の天然石達を見た。 そこに素早く店員が近寄り、 「これ、石の説明が書いてあるんです。宜しかったらどうぞ」 と一枚の紙を成歩堂に手渡す。 「……貰っちゃった」 「ついでに買い物でもしたらどうだ?」 苦笑する成歩堂、店内に入る気はサラサラ無いといった様子で腕を組んでいる御剣。 どうしたものか、と店内に目を向けた成歩堂は、 「――うん、それじゃ一つだけ買ってくるね」 と足早に店へと入った。 待つ事しばし。 「御剣、お待たせっ!」 と言いながら戻ってきた成歩堂の手には、一つの小さな袋があった。 「……それは?」 「指輪」 言いながら袋を開けて。成歩堂は透明で青い、一つのリングを御剣に差し出した。 「ブルーメノウって名前のやつ。細身でシンプルだから、これなら御剣も付けられない? ソコにあったやつなんだけど」 成歩堂に言われて、指差された方向へと御剣が目を走らせる。 クリアガラスのカップに入れられた指輪は、店の入り口の近くに置いてあった所為もあってスグに発見できた。 ……値段、420円。 「成歩堂……仮にも、この私が」 何故こんな安物の、しかも指輪など付けなければならないのだ……と。御剣が言い掛けたのと同時に、 「ちょっとソレって僕のスーツの色に似てるよね」 と、成歩堂は話し掛けてきた。 「ム……」 「片時も離れない、なんて今の僕には不可能だから……せめて指輪を見て僕の事を思って欲しいなあ、なんて……」 そんなのは都合の良いハナシだよね、と慌てて成歩堂は自分の台詞をごまかしてから、 「ともかく、それって『願い事を叶える』ってチカラがあるんだって。御剣の願い事が叶えば良いな、って思ったんだ」 と微笑む。 その朗らかな顔に毒気を抜かれた御剣は、成歩堂の手から指輪を受け取った。 「……そこまで言うのなら、まあ、付けてみても良い」 「本当!? じゃあ早速はめてみて?」 「うむ……」 「入る?」 「左手の、人差し指が丁度だな。中指にも入るが……」 「薬指はッ!?」 「大き過ぎる。付けていても、そのうち外れ落ちて壊れてしまいそうだ」 「そ、そっか……」 あからさまに成歩堂は肩を落としていた。 しかし御剣は苦笑する。 成歩堂は彼なりに考えて、御剣の願いが叶う様にと買ったのだろう。例えそれが非科学的で馬鹿馬鹿しくても、その気持ちは嬉しかった。 御剣はリングを指に嵌めて、その人差し指を成歩堂に突き付ける。 「いいか、成歩堂。暫くはコレを付けておいてやろう」 「法廷でも?」 「う、ム……それは難しいが」 「けど、出来るだけ付けていてくれるんだね?」 「……単に、実験だ。本当に願いが叶うかどうか、一応は調べてみても悪くはあるまい」 「うんうん、それで充分だよ。……ありがと、御剣」 「礼を言われる筋合いは無い」 御剣はソッポを向いて、続けた。 「それに、この指輪はスグに壊れてしまいそうだ。そうなったら、ちゃんと代わりの物を寄越すのだぞ」 「え、それって……」 ――また指輪をプレゼントしても良いって事?―― 浮かべた疑問は口に出さずに。 成歩堂は笑顔を浮かべて、指輪を嵌めた御剣の人差し指をギュッと握った。 |
梨沙様より頂き物です!ありがとうございました! 本当はハロウィン直後に頂いたのですが、アップ遅れました。すみません・・・ さくらんうさぎ、一人で楽しんでました。 あまあまな二人ですよ。店員もあてられちゃいますよね!(店先?) 指輪を贈って、渋ってみせながらも素直に(ほんとは嬉しい)はめてくれる検事とかすごく可愛いです。 検証、といいつつ、24時間体勢ではめててくれるかも。 なるほどくんは『ぼくよりずっと一緒にいるんだ』とそのうち指輪に嫉妬してみたりとか(笑) なるほどくんにはそのうち、『僕色』とかいってスターサファイアあたりがはまったダイヤのちりばめられた婚約指輪をおくるくらいの甲斐性ができるといいな、と思います。 かわりのもの、という表現を→『婚約指輪』と脳内で勝手に置き換えてそうだし、なるほどくん・・・ あ、ひょっとしたら検事もそういう意味なのかしら!?夢はふくらみます。 毎回、素敵な小説をありがとうございます! さくらんうさぎもがんばらなくちゃ、と思いつつ・・・・・・ |