Jelly 長い睫、古い彫刻のように整った白い容貌。 成歩堂は御剣の柔らかな唇に指先をあてた。 息をしていないかのように静止した姿に、少なからず不安を覚えたから。 ほのかなあたたかさと呼気を感じ取って、成歩堂はほっとした。 それでなくても、整いすぎた美貌であるから、逆に呼吸をしていることが不思議でもあった。 「御剣」 眠り姫のようだ、とも思った。 疲れているのか、若干の翳りがみえる。 それは、御剣に常以上の艶をあたえていて、成歩堂は思わず、御剣の身体に触れてしまった。 眠っているとばかり思っていた御剣の瞼がぴくっと動いた。 重たげに長い睫が持ち上がり、宝石よりも高価な瞳があけられる。 いつもの鋭い輝きはなく、茫洋とした光しか宿していない。 夢現の眼差しが宙を彷徨い、すぐに身近な成歩堂をとらえた。 少しばかり、不思議そうな表情で 「なるほどう?どうして?」 自分の家にいるのだろう、と御剣は唇の動きだけで呟く。 成歩堂はみなまで言うまもなく、御剣の言いたいことを知る。 「きみが、番号教えてくれたんだよ」 「そうだったか・・・」 薬で眠りかけていた御剣は成歩堂の言葉に素直に頷いた。 成歩堂は真顔で頷く。 「そうだよ・・・」 御剣の頬を優しく撫でる。 すると、御剣はふわりとした微笑を浮かべ、目を閉じた。 「御剣」 再び、夢の挟間を漂いはじめた御剣。 その穏やかな表情を眺め、成歩堂も表情を緩める。 穢れのない、美しい顔。 成歩堂にとって、御剣は天から降りてきた天使、のような存在。 けして汚れることなどない、純白のー 色素の薄い御剣の柔らかな髪に成歩堂はくちづける。 甘い、匂いにうっとりとした。 御剣は今までの応答もすべて明日には忘れているだろう。 若しくは夢だと思うのだろう。 成歩堂は御剣が強い睡眠薬を飲んでいることを知っていた。 思考が朧だからこそ、何の疑問も抱かずに、自分が此処にいることを受け入れた。 オートロックの錠は成歩堂が勘であけたものだったのに。 「きみは純粋すぎるよね」 白い額に唇をあてる。 御剣は僅かに身じろいだが、瞳はひらかなかった。 成歩堂は寝入ったのを確かめて、御剣のまとったシーツを剥ぐ。 柔らかな春色のパジャマを脱がせる。 磨かれた白い膚に、感嘆の溜息を洩らした。 ふんわりとしたベッドに力なく投げ出された身体は、無防備このうえない。 それでも成歩堂に御剣を陵辱するつもりは全くなかった。 彼にとって御剣だけがこの世で美しいものであり、守るべきものだった。 だから、御剣の身体に残る痕を見て、かなしく思うけれど、何も言わない。 御剣は成歩堂が知らないと思っている。 「きみは真面目すぎる」 成歩堂はつけられた薄い紅い筋、浮かぶ痣を指と唇で辿る。 悪を罰する為に、正義を貫く為に、効率よく、それらをなす為に、御剣がとった行動を成歩堂は知っている。 しなやかな大腿部を押し上げ、御剣の秘された場所を露にした。 双の白銀の膚の挟間に潜む箇所。 すぼまっている筈のそこは、まるで今にも華ひらこうとする蕾のようになっている。 紅く外側に膨れ、蕾型に見えた。 成歩堂は指先を舐め、入り口に触れる。 擦り上げられすぎて痛んだ薄い皮膚からか、蕩けた内部からか、指先を少しいりこませただけで透明な蜜が滲み出た。 明らかな裂傷などはなく、御剣と、そしてその相手はそれなりに慣れていることを示唆する。 重ねられた回数の相手は一人ではないことも成歩堂は知っている。 「それでも、きみは綺麗だ」 様々な男に身体を受け渡そうとも、欲望で汚されようとも、御剣は全然変わらない。 成歩堂は挟間に顔を埋め、いたわりをこめて、腫れた箇所を舐める。 眠っている御剣の身体も、直接的な刺激に僅かに反応をかえす。 身体がぴくぴくと震えて、御剣が甘い声を洩らした。 柔らかな舌を差し込むと、とろとろに溶けた粘膜に包み込まれる。 僅かに粘着質な液の甘さを味わった。 くちゅ、と音をたてて吸い、成歩堂は目を細めた。 開放すると、御剣の腰が僅かに揺らめいた。 成歩堂は軟膏を手に取り、脳の次に酷使されている御剣のその部分に丁寧に塗りこめた。 「はやく、ここまで堕ちておいで」 御剣が堕ちる、のは『人間』への想いに気づいたとき。 自分だけを選んだとき。 それはこちらから問うのではなく、御剣自身で気づかせなければ意味がない。 引きずり落とすのでは、御剣は何時でも天上に帰ることが出来てしまう。 自ら、羽根を落としてでも、こちらに居たい、と思わせなければ意味がない。 成歩堂は名残惜しげにパジャマを着せる。 それから、自分も用意していた色違いのパジャマに着替えた。 御剣の心も身体も、全て自分のものになる日を思い描きながら、成歩堂は眠りについた。 |